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夏休み企画
…と称して去年の公式と同じ期間に毎日更新を目指してたんですが、思った以上に筆の進みが遅かったので最低でも週一更新でがんばります。早めに書き始めはしたんですが途中で書き直したりしてもごもご、と言い訳。

ちなみに内容は前にちらっと話した反抗期ジャンさんです。12,13歳くらいのイメージ。そういうの駄目って人やいけ好かないガキと化す(予定の)ジャンさんは見たくないという人はスルー推奨です。と言っても今回ジャンさんは一言も喋りません。

書き手の力不足故にころころ場面や視点が変換して読みにくいかもしれませんが、全てを受け入れる寛容さのある方は続きからどうぞ。


 





”カポが部屋から姿を見せない”


困惑気味の部下からそんな報告を受けたのは、ようやく朝日が完全にその姿を現した、そんな時間だった。
二代目カポに就任してからというもの、相変わらずくだけた雰囲気を持つジャンがその胸の裡にしっかりカポとしての自覚を抱いていることを、ベルナルドは知っている。そんなジャンが起床時間になって、護衛が扉の外から声をかけても何の反応も示さないというのだ。昨夜は特に会合やパーティなんてものもなく、普段より早く寝室へ向かったくらいだということを考えると、これは些かおかしい。
とはいえ変事の確証もなくカポの部屋へと踏みいるのは一護衛には躊躇われる行動で…困った護衛がこうしてカポのスケジュールを管理し、筆頭幹部でもある自分のところまでやってきたのは当然の成り行きだった。

「昨夜から今朝にかけて、周辺地区に何かあったという報告は?」
「ありません。カポの部屋から不審な物音がしたという報告も入っていません」
「そうか…」

単に深い眠りに落ちていて気づかないだけ、と考えれば話は早いのだが、頭の片隅で違うと否定する声が聞こえる。
そもそもジャンとてカタギとは一線を引くコーサ・ノストラの男、加えて長い刑務所生活の経験者である。寝ている時とはいえ、繰り返される呼びかけに全く気付かないということは無いだろう。
そこまで考えれば、後のベルナルドの行動は至ってシンプルなものだった。

「わかった。では私はこれからカポの様子を伺いにいってこよう」

立ち上がり、席を外す間のことを任せれば安堵の表情を浮かべた部下の顔が目に入る。
こいつは普段からジャンの部屋周りの警護をしていることが多いから、特別ジャンの身を案じているのだろう。つくづく人に好かれる我らがカポの姿を思い浮かべて、つい笑みが零れた。



*****



「…で、突然の召集の理由をお聞かせ願おうか?」

カポの異変の報告が届いてから一時間。ベルナルドの執務室では、それぞれのシノギへと出ていた幹部が一堂に会していた。
ろくに理由も告げられないままの召集に、不機嫌の色を隠す事なくわざとらしいほど慇懃に問いかけるルキーノの反応は最もで、短く謝罪の言葉を口にする。

「すまない。だが、万が一にも組織以外の…充分に信頼が置ける人間以外に漏れたらまずい内容でね」

言って、漏れた溜息は思っていたより重いものになった。自然と寄る眉間の皺を揉み解すように指を添える。

「ッたく、何だってんだよまどろっこしい! もったいぶらねえでさっさと用件を言え!」

そんな僅かな間さえ耐えかねたのか、イヴァンの苛立った声が発せられる。それを合図にしたようにぐるりと集まった面々の顔を見回せば、怪訝な色を浮かべた三対の瞳があった。

いつまでも黙っているわけにもいかない、か。

正直、自分自身まだ事態を把握し切れていないのだが、だからといってこれ以上組織に…カポに関わる一大事を告げることを躊躇しているわけにはいかないだろう。意を決して表情を引き締めれば、ピンと固い空気が張り詰めた。そして。

「カポの…ジャンの身に、まずい事が起きた」

重苦しく告げた言葉に、一瞬の静寂を置いて……その場は一気に騒然とした。

「な…っ」
「どういうことだ、ベルナルド」

戸惑いの生じる中、いち早くその身に纏う空気を殺気立たせたジュリオが鋭い視線を向けてくる。反射的にゾクリと冷える背筋に気付かないふりをして、平然を装いながら残る二人にも視線をやれば、既に衝撃から抜け出したのか同様に鋭い視線が注がれていた。

「まず襲撃の類にあったわけでは無いから、そこは安心してくれていい。状況は、実際に見てもらうのが一番なんだが…一つだけ。これだけは守ってもらうことがある」
「守ること?」
「ああ。それは…―――」



*****



人払いのされたジャンの部屋へと続く廊下。静まり返ったそこを、ベルナルドを先頭に幹部が揃って進む様はそこらの兵隊が見たらぎょっと目を剥く光景だろう。そんな事を考えながら、どことなく落ち着かない気分を誤魔化すようにくしゃりと髪を掻き上げる。指に馴染んだ癖毛を梳かすようにして腕を下ろせば、目の前にはジャンの部屋へと続く重厚な扉が佇んでいた。

『ジャンに事実を伝えないこと』

ほんの数分前、唐突に呼び出されたベルナルドの執務室で告げられた言葉が蘇る。どういう事だと真意を尋ねても、後は現状を把握してからの一点張りでジュリオやイヴァンなどはあからさまに苛立っている。かく言う自分もそう人のことは言ってられないのだが。
意図の掴めない言葉の後に続けられた、何が起こっていても冷静を装えという言葉も気になるが、数ある反論の言葉を飲み込んで俺もジュリオ達もベルナルドの言葉に従っているのは、何よりジャンの身が心配だったからだった。

「今から開けるよ。再三言ったと思うが…」
「何があっても驚くな、だろう」

わかっていると頷けば、苦笑いを浮かべたベルナルドが軽くノックをして入室を告げる。
そうして開かれたドアの先。広いベッドに腰掛ける人物の姿に、思わず目を見開くことになるとは思いもしなかった。


「、ジャン、さん……?」


少し後ろから、掠れ気味の戸惑いに満ちたジュリオの呟きが聞こえる。
この俺が太鼓判を押す極上の金髪。窓から射し込む日の光を反射して一層輝くそれの持ち主は、しかし。


「子供………?」


蜂蜜色の瞳を持つ、まだ年若い少年の姿をしていた。


 
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